ちょっといい話 その2
夜久野での松本零士先生
平成14年12月1日
夜久野町で開催された松本零士氏講演会の日のことです。
その年はいつもより早くから雪が降り
初雪は11月9日でした。
毎日寒い日が続いていたので
「東京と違って夜久野は寒いですから
一枚余分に着ていらしてくださいね」
先生に風邪を引かせては大変と、何度も念を押しておきました。
ところがその日
前日までとは打って変わってぽかぽかの小春日和。
「いや〜、夜久野は寒い寒いと脅されて来ましたが暑いですね〜。」
お迎えに行ったハイヤーの中で先生はニコニコしておっしゃいました。
防寒のためのダウンのコートを脱がれると
赤いセーターに黒のジャケット。
頭にはもちろん
どくろマークの黒い帽子。
先生のご案内役だった私は
控え室で先生と二人きりの時間がありました。
そのときに20枚くらいの色紙を取り出しまして
先生、サインをいただけますか? とお願いしますと
快く引き受けてくださいました。
キュッキュというサインペンの音だけがして
先生の手元をまるで魔術師の手元を見るように見つめていました。
目を伏せた横顔のメーテルや、目を開けて見上げているメーテル。
まつげの一本一本まで丁寧に描かれていました。
あれ?と思ったら今度は鉄郎。
マントの点々を一つ一つ丁寧に。
「先生、描いていただいてる時に失礼ですが
お話させていただいてもよろしいでしょうか?」
と、お尋ねすると
「大丈夫ですよ。」とのお返事。
「マントの点々をそんなに丁寧に書かれるのだとは知りませんでした。」
「昔は全部こうして手描きで細かいところまで書いたものです
今はもう点々は手描きではありませんがね。」
そう言いながら点々を増やしていかれました。
「先生、厚かましいのですがその鉄郎、私にいただけますか?」
先生はニコニコして「いいですよ。」と。
一ヶ月前に名古屋でお会いしたときには
メーテルを描いていただきました。
私の手元にはメーテルと鉄郎のサインがあります。
そのどちらも、先生との思い出深い色紙で
私の宝物になっています。
(2004.9.2)
by怪鳥
Copyright (C) Yakuno Hoshizorano-Kai , All rights Reserved.
|